新聞には科学面があり科学技術や医療に関する記事が日常的に報道されていますが、科学分野が世間から注目されるのはノーベル賞の受賞や画期的な技術の開発や新しい自然現象が発見された時に限定され普段はあまり意識することが少ないのではないかと思います。
新聞は主に政治や経済、社会面を中心に報道されているので科学分野は日頃は注目されることはありません。
科学面の記事は執筆している記者が噛み砕いて解説されているので専門書等で奥深く学ぶよりは気軽に科学に触れられるいい機会なのではないかと個人的には感じますので、科学面に対する関心は結構ある方です。
今回読了した「科学報道の真相」では毎日新聞社で実際に科学報道に携われた元記者でジャーナリズムの研究者がご自身の経験を基に科学報道について解説した内容の書籍です。
この本では最近科学報道で社会から大きく注目された東京電力福島第一原子力発電所の事故報道やSTAP細胞報道の問題点について解説されています。
福島第一原子力発電所の報道では東電や政府の発表をそのまま流す「大本営発表」という紹介がされていましたが、なぜそうなるのかということが解説されています。
当事者や公的機関が発表したことを流すのは大事なことですがSTAP細胞の報道の際には研究者や理化学研究所の発表流し尚且つ研究成果を高く評価したにも関わらず研究成果が虚偽だったと明らかになった瞬間に手のひらを返したように大きなバッシングを展開するマスメディアのスタンスには疑問を感じました。
マスメディアというのは発表者側とオーディエンス(読者や視聴者)の間のフィルターのような役割を担う必要があるのではないかと思います。
しかしSTAP細胞の報道ではそうした機能が果たされていなかったのではないかと感じます。
海外の科学報道と比較するとあまり研究内容に重点が置かれていないのではないかという指摘もあり研究内容に対する理解を促進するために研究者の人柄といったヒューマンストーリーの話を盛り込むことも大事ですが、そちらの方に重点を置き過ぎた感じは否めません。
後半では所謂ジャーナリズム論の話が中心になり客観報道は可能なのかといった話などが中心に展開されています。
ジャーナリズム論を語った書籍は何度か読んだことがありますが、科学分野におけるジャーナリズムを紹介された書籍は初めて読みました。
報道における科学に注目することがあまりないのでこうした書籍を読むのもいい機会ではないかと感じます。