日本の行政や企業のトップであるリーダーには文系出身者が多くを占めており物事の決定が行われていますが、理系分野の専門家は社会のことに無関心で自分の専門分野を究めることに没頭しているというイメージを世間から持たれていると思います。
社会ではいつの時代も様々なアクシデントが起きて混乱していますが、そんな時に文系や理系といった垣根を超えた教養が必要になります。
近年では新型コロナウイルス感染症におけるパンデミックが発生して混乱してしましました。
その際に歴史を紐解き過去に似たようなケースを調べつつ最新の科学技術の知見を合わせながら、問題を解決することが必要とされています。
しかしそのようなことはなかなか出来ていませんでした。
そこで今回読了した、中公新書ラクレ「とがったリーダーを育てる」では東京工業大学で文系理系の垣根を超えた教養を身につけるためにリベラルアーツセンターが発足されてそこでの取り組みについて紹介されています。
東京工業大学は理工系分野のトップクラスの教育研究機関であると世間から評価されていて、2024年中には同じ国立大学の東京医科歯科大学と合併することで注目を集めています。
東工大というと理工系分野に長けている印象がありそれ以外の分野にはあまり関心の低い学生が多いという世間からのバイアスがあるのだと思います。
国立大学ですから入試の際に文系科目も理系科目も必須だと思うのですが、理系オンリーの印象が世間には強くあるそうです。
実際リベラルアーツセンターの先生方も学生さんに対して、そんな印象を持つことが多いようです。
言葉で表現するよりも数式で表現するということも多々あるようです。
しかしテーマを指定して学生同士でディスカッションをしてもらうと様々な角度からの意見が飛び交うようですしあらゆる分野に対して勉強熱心な学生さんが多いようです。
日本では理工系分野の研究というと短期間で成果を出しそれが社会のどんなことにメリットを与えるのかということを追求することが多くそれ故に過去に研究不正の問題などがありました。
リベラルアーツの教員がアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)を視察した際に現地の教員から「すぐに役立つものはすぐに役にたたなくなる」と言われたようで、私も読んでいてこの部分は印象に残りました。
日本では基礎研究が軽視されているということもありMITでの話は肝に銘じなければならないことだと感じます。
大学入学を希望する高校生に対して高校在学中に文系にするのか理系にするのか入試の都合上決めなければなりませんが、本当に社会に必要な教養は文系や理系の垣根を超えた知識が必要で尚且つその知識をベースに自分の視野を広げ自分と境遇の違う人と共存しながらそして弱い立場の人や社会の課題を解決していくことができるリーダーが求められているので、東工大の取り組みを機に多くの教育研究機関でこうした取り組みが普及してほしいと思います。