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地方在住の読書好きで主に通勤電車内で読書をしております読んだ本の内容を整理するためにブログを開設いたしました。 新書を中心に気になるテーマの書籍を読みながら読書Lifeを過ごせたらと思います。

岩波新書の「エノケン・ロッパの時代」矢野誠一氏著を読了しました。

普段は芸能界について言及された書籍を読むことがありませんが、時折昭和のノスタルジーを感じたくなり昭和をテーマにした書籍を読むことがあります。

今回は昭和初期の芸能で特にコメディーに関する書籍を読みました。

岩波新書から2001年に出版された「エノケン・ロッパの時代」という書籍です。

榎本健一ことエノケン古川ロッパという昭和のコメディアンでおそらく現代のお笑いの基礎を作ったといっても過言ではないのかなと個人的には思います。

二人とも東京出身で、古川ロッパは旧華族の家系出身でエノケンは商家出身でそれぞれ芸風も異なります。

古川ロッパ早稲田大学文学部に在籍中に文藝春秋社でアルバイトを行うことになり、そのままエッセイストとして活躍するようになります。

そのため最初は芸人の道に進む考えはなかったそうです。

その後芸人の道に進み声帯模写という今風に言うとモノマネを行って人気を博しました。

一方のエノケンは軽やかでリズミカルに体を張った芸で人気を博しました。

このリズミカルで軽やかな動きで笑いをとるというのは最近までのコントなどで多く見られたと思いますので、エノケンの影響を受けた芸人さんは多かったのではないのかなと感じます。

昭和初期の時代について考察するドキュメンタリーや書籍は数多く存在すると思いますが、昭和初期の芸能史について触れる機会はあまりないのではないかと思います。

戦時下の芸能活動についてもエノケン古川ロッパの活動を中心に紹介されていて、検閲が厳格に行われている中でそれぞれがどのように活動したかについても記されています。

二人とも対象的な形で活動していたことがわかります。

古川ロッパは文筆家でもあり日記魔でもあったので、この作品でも「古川ロッパ昭和日記」などが参照されています。

昭和の芸能史について紹介された書籍を読むことなどあまりないのでこの作品で初めて知ったのですが、あの映画制作会社の東宝宝塚歌劇団の創設者の小林一三氏が設立して東京宝塚劇場の略だったことは今まで知りませんでした。

 

話を古川ロッパエノケンに戻しますと、戦後しばらくして二人は晩年期を迎えますが、往年の輝かしい活躍とは裏腹に過酷な最後を送っています。

エノケンは病魔に侵され片足を切断しても舞台に立ち続け芸人人生を全うされて様々な勲章を受賞されました。

実際にエノケンの作品を見たわけではありませんが、もともと体を張った芸を披露して人気を博していたのでその力強さとプライドで晩年の苦境を乗り越えられたのかなと読んでいて想像します。

一方の古川ロッパは晩年金銭面で苦労されました。

銀行を信用していなかったので、常に全ての現金を持ち歩いていたためそのお金を騙し取られてしまい、病魔に侵されても仕事を辞めることができずに病気を患っていることを周囲に隠しながら端役でもこなしながら最後を迎えられました。

訃報を報じる新聞記事も小さい扱いで往年の活躍をするファンからすると寂しいものになってしまいました。

 

当時から活躍されていた芸人さんは多くいらっしゃると思いますが、このエノケン古川ロッパが後のコメディーの世界に大きな影響を与えたことは間違いないと思います。

二人の存在を知る人も減ってきていると思いますが、完全に社会から忘れ去られることはないと思います。

 

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