私は、防衛政策については苦手意識があり、自分から進んで調べたりすることはしないのですが、今回読了した朝日新書の「防衛事務次官冷や汗日記」という書籍はタイトルが気になり読んでみることにしました。
中央省庁に勤務経験のある方が執筆された書籍は何冊か読んだことがありますが、防衛省にお勤め経験のある方が執筆された書籍は今回が初めてです。
著者の黒江さんが1980年代当時防衛庁だった時に入庁されてから事務次官を退任されるまでを時系列的にご自身のエピソード交えながら話を進めていく流れになっています。
防衛省は2007年に防衛庁から防衛省への昇格を果たし現在に至っています。
他の省庁との違いは防衛省は自衛隊の組織である為、防衛大学校出身の幹部自衛官所謂(制服組)と法案の作成などの国会対応当たる官僚(背広組)という二種類の公務員が勤務しているのが特徴の省庁です。
この本の中にも紹介されていますが、予算を取りまとめる部署では背広組が制服組と財務省との板挟みの状態になり苦労されることが多いようです。
自衛官というとなかなか個性的な印象を受けるので他の省庁では味わうことのない苦労や経験をするのだと思います。
ましては予算となると財務省の許可も必要になりますから板挟みになり強いストレスや疲労に襲われることになることが想像できます。
一人の役人の回顧録の一面もありますから政策や法案の裏側のエピソードだけではなくそこで得られた教訓も紹介されており仕事に対する向きあい方なども学ぶことができますから、ビジネス書の要素もあると思います。
防衛省の事務次官まで出世された訳ですから、世間一般的にはエリート官僚そのものだと思いますが、数多くの失敗を経験されているので完璧な人間などこの世にはいないということなのだとつくづく感じます。
30年程のスパンで起きた防衛省絡みの出来事も紹介されているので、イラク戦争や普天間問題や安保法制そして役人人生のピリオドを打つ要因となった南スーダンPKO日報問題などのニュースで話題になった出来事に数多く携われているので裏側を知れるのと同時にそこで得られた教訓などが紹介されていて防衛省に対する理解や仕事の指南書として読むことができる作品だと思います。