地方創生というフレーズは、随分前から政府が掲げています。
最近よく聞くようになったと感じていましたが、20年以上前の文献を読んでいても発見することが出来たので、ずっと解決できていない課題なのだろうと思います。
今回読了した、光文社新書の「田舎はいやらしい地域活性化は本当に必要か」では都市部でも生活経験があり、鹿児島県の過疎地域で暮らす著者が都心と過疎地域を比較した内容の作品です。
私も地方在住なので、非常に興味があるテーマだったので読んでみることにしました。
地方と一括りにしても、県庁所在地や政令指定都市などの地域はある程度人口も多く、公的機関や商業施設といった生活に必要な機能が都心並みではありませんが、揃っているの地域もあり様々事情や特徴があります。
こちらの作品では、主に過疎地域という限界集落の特徴や都市部との違いについて紹介されています。
読んでいて過疎地域のことをかなり批判的に紹介されているので、疲れやストレスを感じることもありましたが、著者ご自身も都心から過疎地域に移住された際に疲弊されたのだろうとお察しいたします。
政府は地方創生を目玉政策にして担当閣僚を配置するなど、東京一極集中を是正する動きを見せてきました。
著者は本当に地方創生を行い消滅の可能性が高い過疎地域を活性化させる必要があるのだろうかということを提言されています。
無理に活性化などさせずに自然消滅したらそれはそれで、自然環境に還元させれば良いのではないだろうかというご見解を示されています。
これはなかなか新しい視点でした。
著者ご自身も過疎地域に移住するまでは、地方創生は大事だと思われていたようですが、過疎地域で暮らす人々に取材をされる中で、過疎地域の住民は変革を望んでいないし住民がいなくなれば自然消滅でも構わないという意見が多かったそうです。
実際に過疎地域に暮らす人々の意見を聞かなくては発見することのできない事実だったのではないかと感じます。
政府が行う地方創生政策は、都市部で暮らす人々が都心の考えや理想を中心に考案されていることなので、地方のニーズに合わない部分があるのだろうと思われます。
内容としては過疎地域に対する辛口な評価が多くありましたが、メディアなどが主張する見解とは異なる新しい切り口で地方について説かれている作品です。
勿論地方在住中の方のなかには地方の活性化が重要で一極集中に対する是正を行わなければならないと感じておられる方も多いと思いますが、必ずしもそうとは限らない新しい捉え方ができたのでいい勉強になりました。