中央省庁の不祥事が連続で報道されるようになり、新卒学生の国家公務員の志望者数が減少傾向にあるという話をよく聞きます。
官僚不人気の背景には、不祥事だけではなく長年定着してしまっている長時間労働の問題といった職場環境が、働き方改革が推奨される日本社会のなかであまり目立った改善が見られずにいる現状というのも影響していると思われます。
今回読了した、新潮新書の「財務省のワル」という作品は主に財務省の官僚にスポットを当てて財務官僚の特徴や財務省の政策などの話を読売新聞で記者経験がある、岸宣仁氏が紹介した書籍です。
前半は主に財務省の事務次官経験者にスポットを当てて、官庁の中の官庁と言われる財務省のトップにつく人物はとのような人間なのかということが紹介されています。
財務省内で使われている言葉に書籍のタイトルにもある「ワル」という言葉があります。
これは極悪人という意味ではなく官僚として優秀であるという尊敬の念を込めて使われている言葉です。
読んでいて財務省の事務次官(民間企業でいう社長)経験者には全ての人物に当てはまるわけではないのですが、意外と回り道をしている経歴が多いことに驚きます。
エリート官僚というと浪人、留年などがなく全てストレートに進んで行くというイメージがありますが、紹介されている事務次官経験者には意外にも多浪、留年の経験者が多いことが確認できます。
様々な事情があるようですが、挫折を経験している方が人情味があり人望ができて出世しやすい傾向があるということが強調されていました。
挫折とは言っても文系の最難関である、東京大学法学部から旧大蔵省(現財務省)に入省されているので、一見するとエリート街道まっしぐらに見えますがその中でも苦労されている経験があるというのが出世に繋がるのかもしれません。
また地方出身者と都市部出身者や出身高校別に見た出世状況なども表を使って紹介されています。
前半部分は、あらゆるデータを用いて財務省内で出世していく人物はどのような人間なのかということが紹介されています。
後半部分になっていくと、日本の財政状態がなぜここまで悪化していったのかといった財務省や日銀、金融庁などの政策についての解説があります。
著者が長年財務省の記者クラブである、財政研究会での取材経験や人脈を生かして得た情報を踏まえて、財務省をはじめ金融行政の今後のあり方について考えるいいきっかけになる書籍だと思います。