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地方在住の読書好きで主に通勤電車内で読書をしております読んだ本の内容を整理するためにブログを開設いたしました。 新書を中心に気になるテーマの書籍を読みながら読書Lifeを過ごせたらと思います。

新潮新書の「昔はよかった」病 パオロ・マッツァリーノ氏著を読了しました。

人は過去の記憶を都合よく解釈してしまうことがあるようです。

特に人生経験が豊富な中高年に多くある症状のようです。

私は中高年ではありませんがそうした症状が最近よくありインターネットなどで調べてみると人間は、現在の生活に不満があると過去を美化してしまう傾向があるようです。

 

今回読了した新潮新書の「昔はよかった」病ではイタリア人で日本文化史研究家のパオロ・マッツァーリーノ氏が過去の新聞記事や書籍などの資料を調査し昔の日本社会が本当に良かったのかということを、治安や人々との絆などあらゆるケースを現在と比較しながら検証した書籍です。

 

中高年の方がよく口にされる「昔は良かった、今の若者や社会はダメだ」というフレーズだけを聞くと漠然と昔の社会や若者は素晴らしいのかと感じてしまいますが、人間の本質というのは20年30年のスパンではそう簡単に変化しません。

私はゆとり教育世代だからなのか、この手の過去を美化するフレーズでよく聞いてきたのが若者の学力低下問題です。

 

ゆとり教育問題の対応として、平成の時代に学校の夏休みが短縮されたことなどから「最近の若者は頭が悪い昔の学生の方が優秀だった」という意見を私はよく耳にしていました。

 

私は頭が悪い人間なので素直に「昔の学生の方が優秀だったのか」と納得していました。

 

他の世代が若者の頭や成績が悪いと揶揄する理由には世界的に行われる学力調査の結果の順位が年々下がったことが主な要因です。

しかし昔よりも調査対象国が増えたことにより順位が下がるという統計学上の性質があり昔とそれほど大きな変化はないと有名なフリージャーナリストが解説されていました。

この順位とゆとり教育制度が重なり平成の学生が昭和世代から揶揄されたわけです。

 

この先人工知能(AI)の発達など、社会の変化に伴い教育カリキュラムがその都度変更されるでしょうから、どの時代が素晴らしいなんてことは断言できないでしょう。

 

この作品には学力のことについては言及がありませんでしたが、明治、大正、昭和と昔の日本社会にスポットを当て現在の社会と比較して著者の毒舌な批評を交えながら「昔は良かった」という嘆きは正しいのかどうなのかということを考察することができます。

 

自分も冷静に過去を振り返ってみると過去は過去で苦労も多々あることをこの本を読んでみて感じました。

 

今を嘆いても過去は戻ってくることはないですし、いつの時代もいいことも悪いことも両面あると思います。

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