フェイクニュースやポスト真実といった言葉が最近よく聞かれるようになりました。
今回読了した岩波新書の「メディア不信」ではこうした既存メディアに対する不信感がなぜ起こったのかについて考えていく書籍です。
ロイター通信などに勤務経験がある著者がドイツ、イギリス、アメリカ、そして日本のメディアの特徴について説きながら、最近のメディア事情ついて解説されています。
アメリカ大統領選挙の時に飛び交ったフェイクニュースというワードは事実を伝えないという意味ではなく自分の考えと異なる考えを主張する相手に対して、発せられる言葉です。
最近SNSやインターネットが普及して様々な意見に触れる機会が増えましたが、その一方で自分の考えとは異なる相手を受け入れない不寛容さを感じます。
そのSNSを活用した選挙戦の実情なども紹介されています。
既存メディアは「弱者の視点に立った報道を」とか「権力の監視役」などの理念を持ちながら日々報道にあたっているような主張をしていますが、高学歴で高給取りの身分では流石に庶民の生活の実態を把握するということはできるはずがありません。
従って一般市民との乖離が起き既存メディアに対する不信感の一因になっているのだと感じます。
このことは日本でも海外でも共通していることだと思います。
日本ではメディアに対する不信感というより無関心さが強くでていると著者は主張しています。
しかし、無関心ではあるものの既存メディアに対する信頼はそこそこ高い傾向にあるようです。
新聞やテレビといった既存のメディアに加えてSNSなど新興メディアが急速に普及し始めていくなかでどのようにしてメディアと関わりながら情報社会を過ごしていくか、メディア側の人間と一般市民が考察していくためのきっかけとなる書籍だと思います。