Reading

地方在住の読書好きで主に通勤電車内で読書をしております読んだ本の内容を整理するためにブログを開設いたしました。 新書を中心に気になるテーマの書籍を読みながら読書Lifeを過ごせたらと思います。

岩波新書の「行動経済学の使い方」を読了しました。

従来の伝統的な経済学では人間は、合理的な判断で経済活動を行なっていることを前提に理論が作られているようですが、実際のところすべての事柄に於いて合理的な判断をしているわけではないのです。

人間が合理的な判断をして日々経済活動を行なっているという前提の方が、理論を作り易いという都合があるそうですが、そこに待ったをかけたのが行動経済学という分野です。

今回岩波新書の「行動経済学の使い方」では行動経済学の基礎知識を解説しながら、合理的な判断が出来ない人間の心理の特性を見極めた上で非合理な判断から合理的な判断へ導く方法が指南されています。

自己啓発本のような印象も感じられます。

 

この本は大阪大学経済学部の講義を基に執筆されています。

生活をしていく上で関わりのある医療、労働、公共政策などの分野で、人々がどのような意思決定を行なっているかあらゆる実験データが紹介されています。

また意思決定の理由を伝統的な経済学の視点と行動経済学の視点、双方の見解が紹介されているのが特徴だと思います。

 

人間は話の全体で印象に残った部分だけを抜粋して意思決定を下してしまう傾向があります。

例えば治療法の説明で、この治療行うと90%は成功すると説明するのと10%失敗すると説明を受ける場合であれば、後者の説明では治療を断る患者がいるのに対して、前者の説明だと治療に前向きな返答をする患者が多いという実験データがあります。

どちらも意味は同じなんですけどね。

医療現場では医師が患者に対して説明をしっかりと行ったつもりでも患者が十分に理解出来ていないケースも多々あるようですが、患者が専門的な知識がないこともあると思いますが、そうした印象で判断してしまうことがあるので行動経済学の知識を応用することによりその問題がクリアされる事例もあるようです。

 

社会科学ではありますが、経済学と心理学が融合された印象が感じられる分野です。

 

また最近、色々と問題がありますが国が行う公的社会保障の加入義務が国民には生じますがそれがなぜなのかなどの説明もあります。

 

 

経済学系の書籍によくある数式を使った数学的要素のある説明もないので、理系科目が苦手な方でも安易に読める本です。

行動経済学は、伝統的な経済学とは対照的な視点で人々の経済活動を分析した分野なので面白く新たな発見があると思います。

f:id:Leading:20200124140638j:image