日本の公共交通機関で多くの人々にとって馴染みの深い企業がJRではないでしょうか。
そのJRは1987年に当時の日本国有鉄道(国鉄)から民営化されて日本全国地域別に分社化されて現在に至ります。
今回読了した中公新書の「国鉄」というタイトルの作品では、1949年に発足した日本国有鉄道(国鉄)の38年間の歴史を振り返りながら日本の鉄道政策そして今後どのように鉄道を活用していくべきかについて説かれた書籍です。
著者は国鉄に入社後主に技術畑を歩まれて民営化後はJR九州の社長を務めた人物です。
中公新書だけあってなかなか読み応えのある内容になっていて、新書にしては珍しくページ数も300ページ以上ありました。
国鉄について説かれていますが、日本の鉄道史を扱った書籍と見ていいと感じるほど情報量が多いと思います。
著者が技術畑の出身ということもあり鉄道車両などの紹介が多いと感じました。
そして日本の戦後近代史と照らし合わせながら、国鉄の歴史について見ていけるところが魅力でもあります。
国鉄のような大規模な組織となると労働組合が複数存在していて昭和の時代はストライキなどが激しく鉄道の運行にも影響していたというのが平成や令和の時代からすると想像もつかないことだと思います。
また国鉄の経営状態はとても悪く大きな赤字が続いていたことも問題点だと思います。
国鉄が残した債務残高は、2021年度末時点で15兆5678億円も残っているようでお役所体質の経営が良くなく、またサービスも悪かったので、乗客が増えない状態が続いてしまったので民営化してお客様目線でのサービスや経営を行う必要になりました。
また鉄道事業のビジョンについても著者の見解が記されています。
今後ますます日本社会では人口が減少していくなかにおいて、鉄道のあり方については人の移動も人口も減るわけですから田中角栄時代に行われた日本列島改造論で全国に新幹線を整備するという政策が長い年月をかけて実現しようとされていますが、高速で人が移動することも大事ですが、何より人口減少時代ですからその新幹線網を貨物輸送に活用するべきという考えを述べられています。
最近は生鮮食品などを新幹線で輸送する話が報道されていて今後の物流分野における活用を模索している段階なんだろうと思います。
鉄道は長年日本社会において移動手段の要でありますから、鉄道史を振り返りながら今後の鉄道のあり方について考えていくうえで良書だと思います。